ご存じのとおり、日本で働く外国人労働者の給与からは、年金保険料が差し引かれています。
この保険料は、本国に帰国後に日本年金機構に申請することで還付を受けることが可能で、「脱退一時金(dattai-ichijikin)」と呼ばれます。
本日は、20,000件以上の脱退一時金申請を処理してきた社会保険労務士が、申請手続きについて解説します。社会保険労務士は、人事労務、社会保険、年金業務の専門家です。
本記事では、あなたが自身で申請する際のコツや重要ポイントを解説します。
Contents
脱退一時金の制度と申請方法とは?
この一時金は、外国人のための制度です。日本国籍の方は申請できません。
日本年金機構のホームページによると、「日本国籍を有しない方が、国民年金、厚生年金保険(共済組合等を含む)の被保険者資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができる。」とされています。
この申請は、「日本年金機構」に対して申請書を提出して行います。年金機構は皆さんの居住履歴や保険料額、出入国履歴をもとに、4-5か月ほどかけて審査を行います。一時金額は、皆さんが支払った日本の年金保険料と、働いた期間を基に計算されます。
1. 脱退一時金の支給条件
脱退一時金の申請条件は以下のとおりです。以下の全てを満たす必要があります。
- 日本国籍を持っていないこと
- 日本国内に住所がないこと(日本に住んでいる間は申請できません。)
- 日本の会社を退職していること
- 6ヶ月以上年金保険料を支払っていること
- 年金受給資格(老齢年金)を持っていないこと
帰国日が決まったら、早めに申請準備をしましょう。
日本の住所を失った後、2年以内に申請しなければ還付を受ける権利が失われます。
十分注意してください。
1-2. 老齢年金について
もしあなたが日本に10年以上住んでいる場合、脱退一時金は受け取れない可能性があります。その場合、日本の老齢年金を受け取る資格が得られます。
これは自動的に切り替わるので、老齢年金の受給資格がある場合は脱退一時金を受け取ることが出来ません。
また、在留資格が永住者の方も受け取れない可能性があります。
2. いくら受け取れるのか?
受け取れる金額は、年金を支払った期間と平均給与額によって決まります。
例えば、厚生年金(会社員)の場合、試算額は以下の通りです。
- 平均月給が 30万円
- 3年間勤務
計算式:30万円 × 3.3(支給率) = 99万円
支給率は以下の表を確認してください。

2-1. 国民年金について
会社員の多くは厚生年金に加入していますが、自営業者やフリーランスは国民年金に加入しています。
国民年金の場合、脱退一時金の支給額は固定されており、下表のとおりです。
また、当社のWebサイトで簡単なシミュレーションができますので、お試しください。

3. 脱退一時金の申請フロー
まず、出国する前に、市区町村役場で「転出届」を提出してください。
住所が日本にある間は申請できません。帰国前に、必ず転出届を提出して、日本の住所を削除してください。
転出届は、帰国予定日の10日前から提出可能です。(自治体によります。)
また、日本の会社を退職した後にのみ脱退一時金を申請することが可能です。
4. 必要書類の準備
以下の書類を準備してください。コピーでも構いません。
これらを年金申請書と一緒に同封して提出する必要があります。
- パスポートのコピー(顔写真ページ)
- 銀行口座証明書(振込先銀行の情報)
- 年金手帳や、年金番号通知書のコピー(年金番号が重要です。)
- (可能なら)転出証明書のコピー
4-1. 銀行証明書とは?
銀行証明書とは、銀行名・口座名義・口座番号を証明する書類で、海外では「Bank Statement」と呼ばれています。
💡 日本の銀行を指定する場合: 通帳のコピーが該当します。
なお、 ゆうちょ銀行は指定不可です。(JPSはゆうちょ銀行に脱退一時金を送金できません)。
5. 年金申請書の記入方法
以下の「脱退一時金申請書」に情報を記入してください。
申請書は日本年金機構(JPS)の公式サイトからダウンロードできます。
- 記入はすべて大文字のアルファベットで正確に記入
- 受取銀行のSWIFT CODEを明記。口座番号は、大きく正確に
- 郵送物を受け取れる海外住所を記入(※重要 この住所にJPSから返戻書類や年金決定通知書が届きます。)
口座名義人の名前や口座番号に誤りがあると、JPSから確認書類が送られてしまいます。その場合、訂正した書類を返送しない限り、審査が再開しません。間違いがないよう注意して記入しましょう。
💡 申請は以下の住所に郵送してください。
Japan Pension Service (Foreign Business Group)
3-5-24, Takaido-Nishi, Suginami-Ku,
Tokyo 168-8505 JAPAN
〒168-8505 東京都杉並区高井戸西 3 丁目 5 番 24 号
日本年金機構 (外国業務グループ)
※ 内容に問題がなくても、審査に4-5ヶ月かかります。
JPSが申請を承認すると、80%が直接口座に振り込まれます。(20%は所得税として自動的に控除)
6. 所得税の還付手続き
あなたの申請が承認されると、日本年金機構は貴方の口座に、脱退一時金の約80%を送金します。
残りの20%は所得税として自動的に控除されますが、日本で確定申告をすることで、控除された20%の所得税の還付が可能です。
この手続きは、日本に住む税務代理人を指定する必要があり、税務代理人には、専門のエージェントや日本在住の友人、会社を指定することができます。
税務署に還付申告後、1.5ヶ月程度で、税務署から指定口座に振り込まれます。
7. 日本での代理申請サービス
ご覧の通り、年金の還付申請は、手続きが非常に複雑なため、専門サービスを利用することをお勧めします。自力で全額還付を受け取ることは、外国人にとって難易度が非常に高いため、是非、我々にご相談ください。
我々は20,000件以上の申請サポートを行った経験とノウハウがあります。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。